大判例

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東京高等裁判所 平成3年(ラ)599号 決定

相手方会社の定款には株式の譲渡については取締役会の承認を受けなければならない旨の譲渡制限規定が設けられている。抗告人高山は、昭和六〇年一〇月一〇日抗告人市川にその所有の株式五二五〇株を譲渡したとして取締役会の承認を求め、同日承認の取締役会の議事録が作成されている。右取締役会の構成員は抗告人高山、太田キヨ子、野中八重子の三名であり、商業登記簿上はいずれも昭和六〇年八月一八日の株主総会における取締役選任の決議に基づいて就任したものとされている。しかし、右株主総会に際しては少なくとも発行済株主総数の四割に当たる株式を有する株主である高山博に対する招集通知が全くされていなかった。

以上の事実が認められ、この事実によれば、昭和六〇年八月一八日の株主総会の招集には重大な手続的瑕疵があり、同総会における前記三名の取締役選任決議は法的には不存在というべく、その効力を有しないから、当該取締役によって構成される取締役会は正当な取締役会とはいえず、したがって、昭和六〇年一〇月一〇日の取締役会における前記株式譲渡承認決議も効力を有しないと解するのが相当である。そうとすれば、仮に抗告人市川が抗告人高山からその主張するような株式の譲渡を受けたとしても、その譲渡については定款所定の取締役会の証認決議がされていないことになるから、抗告人市川は相手方会社の株主ということはできないものといわなければならない。抗告人らは、疎甲一七号証の三(閉鎖商業登記簿謄本)に、抗告人高山、太田キヨ子、野中八重子の三名が相手方会社の取締役として登記されていることを理由に、右三名が適法に選任された取締役であるかのようにいうが、右の登記上の記載は、前記のように不存在の株主総会決議に基づくものであるから、これを理由に右三名が適法に選任された取締役であるということはできない。そして、他にこれを有効と認めるに足りる資料はない。

(千種 伊藤 近藤)

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